AIは「名刺」をどう評価する? デザインを分析させてみたら、、

2023.07.31
AIは「名刺」をどう評価する? デザインを分析させてみたら、、

「AIで名刺って作れるの?」というご質問を、最近よくいただきます。

結論から書きます。AIは名刺の見た目を作るところまでは、もう十分に強いです。数十秒で、配色もレイアウトも整ったものが出てきます。ただし、そこから「日本の名刺として印刷できるデータ」にするまでには、まだ人の手が要ります。

この記事では、実際にAIに名刺を作らせて、出てきたものを印刷会社の目で測った結果をそのまま載せます。そのうえで、テンプレートから作る方法と比べて、どちらを選べばいいかを整理します。

AIで名刺デザインを作ってみる

AIデザインツールに、次のプロンプトを渡しました。

日本語の名刺デザイン。
会社名「シンセイ印刷」、氏名「野田 直人」、肩書「代表取締役」、電話「0586-XX-XXXX」、メール「info@example.jp」を入れる。
横向き、落ち着いた紺とグレーの配色、シンプルで信頼感のあるビジネス向けレイアウト。

出てきたのがこちらです。

AIデザインツールが生成した名刺デザインの例(紺とグレー配色の横型名刺)
AIに上のプロンプトを渡して出てきた名刺。デザインは成立しているが、測ってみると印刷に回す前に直す点が4つあった。

正直に言うと、これが数十秒で出てくるのは強いです。配色は指示どおりの紺とグレー、文字組みも破綻していません。「名刺のデザインを考える」という工程そのものは、AIがかなりの部分を引き受けられるようになっています。

問題は、この先です。

出てきたデータを印刷会社の目で測ってみる

できあがった画像を実際に測ったところ、印刷に回す前に直すべき点が4つ見つかりました。

1. 日本の名刺サイズで出てこなかった

これが一番効きます。書き出された画像は1200×686ピクセルで、縦横比は1.749でした。

規格 縦横比
出てきた画像 1.749
欧米の名刺(3.5×2インチ=88.9×50.8mm) 1.750
日本の名刺(91×55mm) 1.655

日本語で指示して、日本語の内容を入れたにもかかわらず、出てきたのは欧米サイズでした。日本で流通している名刺は91×55mmです。このまま印刷に出すと、縦横比が合わないので、引き伸ばすか余白を足すことになり、どちらにしてもデザインは崩れます。

※この検証は、あるAIデザイン作成ツールの無料プランで、既定の設定のまま生成した結果です。有料プランならカスタムサイズを指定できるものもありますし、ツールによっても出力は変わります。「AIに任せると必ずこうなる」ではなく、「条件を指定しないとこうなることがある」とお読みください。

2. 指定した項目が入っていなかった

プロンプトでは電話番号とメールアドレスを指定しました。しかし書き出された表面に入っていたのは、会社名・氏名・肩書きだけです。

AIは「それらしい名刺」を作ることを優先するので、指示した情報が静かに落ちることがあります。刷ってから気づくと、100枚単位で刷り直しです。入稿前に、必要な項目が全部載っているかを目で確認してください。

3. 文字が断裁位置に近すぎた

氏名と肩書きが、下端のかなり近くに置かれていました。

名刺は紙を重ねて一気に断裁するため、仕上がり位置は0.5mm前後ずれます。そのため、文字は仕上がり線から3mm以上内側に入れておくのが原則です。画面で見て「ちょうどいい」と感じる位置は、印刷では切れる位置であることが珍しくありません。

あわせて、背景に色や写真を敷く場合は、外側に3mmの塗り足しが必要です。断裁がずれたときに紙の白が出るのを防ぐためのもので、これもAIの出力には基本的に付いていません。

4. RGBで出てくる

書き出しはRGBでした。印刷はCMYKなので、変換が要ります。画面で見て鮮やかだった色ほど、変換後は沈んで見えることがあります。特に蛍光色に近い青や緑は、印刷では再現できません。

なお、解像度は問題ありませんでした。91mm幅と仮定した実効解像度は335dpiで、印刷に必要な350dpiにほぼ届いています。「AIの出力は解像度が足りない」と書かれているのを見かけますが、少なくとも今回の実験ではそうなりませんでした。

AIは名刺を「評価」するのは得意です

作らせるのとは逆に、できあがった名刺をAIに見せて評価させると、これがなかなか鋭いのです。以前、ある名刺のデザインをAIに見せて「良い点と悪い点を忖度なしで評価してくれ」と頼んだことがあります。

褒めたのは、色数を抑えた配色による信頼感、情報の並びの整理、余白の取り方。いずれもデザイナーが気にする点をきちんと押さえていました。

一方で、指摘も容赦がありませんでした。「ロゴが控えめすぎてブランドの印象が弱い」「SNSやサイトへ飛べる導線(QRコードなど)がないのは現代の名刺として不便」「読みやすさはあるが、書体がやや無難すぎる」。どれも、言われてみればその通りです。

AIは批評とアイデア出しが得意で、ミリ単位の調整が苦手。今回の実験と合わせて考えると、この整理がしっくりきます。

テンプレートから作るとどうなるか

もう一つの道が、最初から名刺用に作られたテンプレートを使う方法です。

こだわりの印刷屋のデザインスタジオでは、128種類の名刺テンプレートから選んで、文字を差し替えるだけで名刺が作れます。ブラウザだけで完結し、ソフトのインストールもログインも要りません。

AIのように「ゼロから考えてくれる」わけではありません。ただ、最初から91×55mmで、塗り足しも文字の内側の余白も設計に入っています。今回AIの出力で引っかかった4点が、そもそも起きません。

手順は名刺テンプレートの使い方(画像つき手順)で説明しています。

AIとテンプレート、2つを比べる

AIで作る テンプレートで作る
デザインの自由度 高い。ゼロから発想してくれる 選んだ枠の中で調整
できるまでの時間 生成は数十秒。ただし直しに時間がかかる 文字を差し替えて数分
日本の名刺サイズ プランや設定次第。今回は欧米サイズで出た 最初から91×55mm
塗り足し・文字の余白 基本的に付いていない 設計に入っている
RGB。CMYK変換が要る 印刷用に整えて出力
直しやすさ 作り直すたびに結果が変わる 文字だけ直せる

どちらを選ぶべきか

ここまでを踏まえると、選び方はわりとはっきりします。

デザインの方向性を決めかねているなら、まずAIに何案か出させてみてください。色の組み合わせやレイアウトの当たりをつける道具として、とても優秀です。そのうえで、気に入った方向に近いテンプレートを選んで作るのが、いちばん速くて確実だと思います。

すぐに印刷まで届けたいなら、テンプレートから作ってください。サイズも塗り足しも最初から入っているので、作った時点で入稿できます。

すでにご自分でデータをお持ちなら、そのまま入稿していただけます。サイズや塗り足しに不安がある場合は、シンセイ印刷の印刷サービスまでご相談ください。データを拝見して、印刷できる状態かどうかをお伝えします。

よくある質問

AIで作った名刺データはそのまま入稿できますか?

多くの場合、そのままでは印刷できません。サイズが日本の名刺(91×55mm)と違っていたり、塗り足しが付いていなかったり、RGBのままだったりするためです。データを拝見すれば、どこを直せば印刷できるかをお伝えできます。

名刺のサイズは何ミリで指定すればいいですか?

日本の名刺は91×55mm(縦向きの場合は55×91mm)です。AIツールで作るときは、最初にこのサイズを指定してください。あわせて「上下左右に3mmの塗り足し」「文字は仕上がり線から3mm以上内側」も指示に入れておくと、直しが減ります。

AIが作った画像の文字が変なのですが直せますか?

画像として書き出されている場合、文字だけを打ち直すことはできません。文字が編集できる形式で保存し直すか、テンプレートで作り直すほうが早いことが多いです。日本語は特に崩れやすいので、生成後は必ず一字ずつ確認してください。

デザインの知識がなくても名刺は作れますか?

作れます。テンプレートを選んで、会社名やお名前を差し替えるだけです。サイズや塗り足しといった印刷側の決まりごとは、あらかじめ組み込まれています。

まとめ

AIは名刺のデザインを形にするところまで来ています。実際に作らせてみて、その速さには素直に驚きました。

引っかかるのは、その先の「日本の名刺として刷れる状態にする」最後の一手前です。サイズ、塗り足し、断裁の余白、色。ここは印刷の側の決まりごとなので、AIが勝手に面倒を見てくれるものではありません。

そこを気にせず作りたい方には、テンプレートから作る方法をおすすめします。

テンプレートから名刺を作る(128種・デザインスタジオ)

この記事は役に立ちましたか?
もし参考になりましたら、下のボタンで教えてください。

関連記事

目次